去年の秋、私は「守るべきもの」を胸に抱えていました。 今はもうこの世にいない妻です。 私たちの日常(日々の暮らし)を支えるために、小さな自家焙煎の商売を続けていました。 コーヒー豆自家焙煎の人気が高まりつつあるのを肌で感じていたこともあり、「や…
朝いちばんに淹れたコーヒーには、その日の気分をそっと整えてくれる力があります。 湯気の向こうに立ちのぼる香りを吸い込みながら、「今日も始まるな」と思うあの瞬間。 けれど、現実はなかなかゆっくり味わわせてくれません。 気づけばカップの中身はすっ…
日本には、春夏秋冬という豊かな四季がある。 季節が変われば、空気の匂いも、着るものも、食卓に並ぶ料理も変わっていく。 その移ろいの中で暮らしていると、自然と「季節に寄り添う味覚」というものが育っていくのだと思う。 コーヒーの世界でも、季節限定…
4月4日の土曜日は、まるで季節外れの台風のような一日だった。 風は唸り、雨は横殴りで、店の前の通りを歩く人影もほとんど見えない。 そんな天気のせいか、店に来てくれたのは3人だけ。 しかも、3人とも正午(12時)から12時30分のあいだに集中して…
エカワ珈琲店では、普段はハンドドリップでコーヒーを淹れています。 ゆっくりお湯を注ぎながら、豆の香りやふくらみを確かめる時間は、毎日の大切なひとときです。 ただ、味のチェックをしたい時には、ペーパーフィルターを使うコーヒーメーカーで淹れるこ…
再開の3月、静かな手応え 3か月ぶりに焙煎コーヒー豆の販売を再開した3月。 正直なところ、長い休業のあとにお客さんが戻ってきてくれるのか、不安がなかったわけではありません。 ところが、ふたを開けてみれば—— 販売量は33kg、売上は約23万円。 1…
気がつけば、「エカワ珈琲店のブログ」を始めてから、もうずいぶん長い時間が経ちました。 最盛期には、ひと月でページビューが数万を超え、クリック広告だけで数万円ほどの収入があったこともあります。 あれは、いま思えば夢のような時期でした。 ところが…
コーヒーの世界に沈んでいく余生 私の唯一の趣味は、コーヒーと、そのコーヒーにまつわる仕事です。 今年の秋には七十五歳。後期高齢者と呼ばれる年齢になります。 そんな私が、突然ひとりになりました。 妻に先立たれ、家の中の静けさが、時に胸の奥を冷た…
コーヒーと、私のこれからの日々 1月、2月は、電子書籍を作ったり、ブログを書いたり、家の中に籠って独りで出来ることだけを続けていました。 文章を書くことは嫌いではありません。 むしろ、コーヒーについて考えたり、言葉を選んだりする時間は、私にと…
総合病院の循環器内科の待合室に腰を下ろすと、視界の端にあの廊下が見える。 車いす専用のトイレへと続く、あの短いようで長い廊下。 去年の夏、週に三度、妻と一緒に通った透析室へ向かう道のりだ。 タクシーを降り、車いすを押しながらエレベーターに乗り…
電子書籍『エカワ珈琲店へGO!(2)』を出版しました! 2026年3月15日(日曜日)、キンドルで新しい電子書籍『エカワ珈琲店へGO!(2)』をセルフ出版しました! キンドルの販売ページには「要約」だけを載せていますが、この『エカワ珈琲店のブログ』で…
人は、ある日ふと立ち止まる。 それは自分の意思とは関係なく、心と身体が「もう少し静かに歩け」と告げてくる瞬間だ。 去年の十二月、私はその声に従うしかなかった。 精神の底に沈殿した重い影と、身体の不調が重なり、コーヒー豆を焼く気力がどうしても湧…
コーヒーの値段には、不思議な境界線があります。 一杯の値段が少し変わるだけで、その飲み物が持つ「距離感」まで変わってしまうのです。 ほんの少し高くなるだけで、その一杯は日常からふわりと離れ、まるで特別な儀式のような距離をまといはじめるのです…
三月八日、日曜日の午前。 久しぶりに焙煎機に火を入れた。 前回、豆を焼いたのは一か月も前のことだ。 あのときは、自分の飲む分と、お供えに使う分、そしてご近所さんへのささやかな差し入れだけ。たった一回の焙煎で十分だった。 しかし昨日は違った。 営…
新しいパソコンを開封した朝に 三月一日の日曜日に注文したパソコンが、四日の水曜日に届いた。 段ボール箱を開けたのは、翌日の木曜日。 新しい機械の匂いと、薄い保護フィルムの手触り。 そのどれもが、久しぶりに「未来」を感じさせてくれた。 初期設定に…

