古希3ブログ

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とんかつ屋の悲劇は生業商売の宿命、だけどコミミュニティー市場は只今拡大中

「とんかつ屋の悲劇」という言葉、インターネットで調べると、2018年の夏頃に登場して話題になっていた言葉です。

行列ができる人気のトンカツ屋さんが、ある日突然店じまいする現象を、外食チェーン店の幹部の人たちが「とんかつ屋の悲劇」と表現しているとのことでした。

外食チェーン店なら、1000円~1500円くらいの値付けをしなければ利益を出せない品質のトンカツ定食を600円~800円くらいで売っていて、グルメサイトなどで「何十年も変わらない値段、チェーン店では考えられない品質の高さと値段の安さ」と紹介されて人気を博しているとんかつ屋さんが、突然に店じまいする現象を「とんかつ屋の悲劇」と表現したようです。

 

【参考】生業商売=路地裏経済、だから竹内宏さんの『路地裏の経済学』

www.ekawacoffee.xyz

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【目次】

とんかつ屋の悲劇が発生する原因

街で人気の「とんかつ屋」さんは、店舗は自己所有で借金もほとんど無くて、商売を始めて長い年月(何十年)が経過しているので設備の償却が終わっていて、店舗は高齢の夫婦2人で切り盛りしていて、商売が生きがいになっていて、高齢ですから国民年金を受給していて、その年金が補助金のような役割を演じているので、それほど儲けられなくても営業を続けられる仕組みになっていて、それが若い世代が「街で人気のとんかつ屋」を引き継ぐ際のネックとなっているというのが、外食チェーン店側の見方です。

そして、それが「とんかつ屋の悲劇」が発生する原因だと考えているようです。

 

しかし、それは間違っていると思います。

業種は違いますが、パパママ規模の自家焙煎コーヒー豆小売商売を生業として営んでいる年老いた珈琲豆焙煎屋(エカワ珈琲店の店主)の視点では、悲劇でも何でも無くて、当たり前の現象にすぎません。

40年近く前のベストセラー竹内宏さんの「路地裏の経済学 」は、生業は人に依存しているビジネスだから継続性がなくて、事業は組織に依存しているビジネスだから継続・引き継ぐことができると、生業と事業の違いを説明してくれています。

ようするに、街で人気の「とんかつ屋」さんは、熟練の技術が必要な生業商売だから、簡単に引き継ぐことが出来ないというのが正解だと思います。

 

 

街で人気の「とんかつ屋」さんコミュニティー

街で人気の「とんかつ屋」さんにやって来るお客さんは、熟練した技術によって作り出されるソースとトンカツに興味を持っている『街で人気の「とんかつ屋」さん』コミュニティーに属する人たちです。

外食店チェーンは、マスマーケット(大衆市場)=コモディテイー市場で商売をしていますが、街で人気の「とんかつ屋」さんは、コミュニティー市場で商売をしています。

コーヒー豆自家焙煎店は、クラフトコーヒーコミュニティー市場で商売をしていて、街の「とんかつ屋」さんは、『街で人気の「とんかつ屋」さん』コミュニティー市場で商売をしています。

コモディティー市場とコミュニティー市場では、商品の製造方法も商品の販売方法も、消費者の商品購入方法も商品利用方法も異なっています。

そして、コモディティー市場は飽和状態気味ですが、コミュニティー市場は拡大傾向を示しています。

 

人気の「とんかつ屋」さんが値上げをしない理由

高齢者夫婦が営んでいる街で人気の「とんかつ屋」さんですが、年老いた珈琲豆焙煎屋夫婦の商売経験から、公的年金(大体が毎月5万円未満の国民年金)を補助金として商売を継続しているとは思えません。その必要が無いわけですから。

街で人気の「とんかつ屋」さんは、品質が高くて値段が安くても儲けられる熟練した技能・仕組みを、長年(何十年も)商売を続けている間に自然と作り上げています。

もちろん、販売価格が安いわけですからぼろ儲けはできませんが、それなりの収入は確保できています。儲けられなければ、商売が成り立ちません。

値段を上げられないのは、長年に渡って関係を築いて来たコミュニティーの人たちとの交流があるからだと思います。

 

人気の「とんかつ屋」の生産性

外食チェーン店なら1000円~1500円で提供しなければ採算の取れない「トンカツ定食」を、600円~800円くらいで提供して繁盛している、高齢者夫婦が営んでいる街で人気の「とんかつ屋」さんは、外食チェーン店と比べると相当に生産性が高いのだと思います。

そして、まだまだ生産性が高くできる可能性を持っています。

おそらく、街で人気の「とんかつ屋」さんは、外食チェーンのトンカツ定食の価格と同じレベルかそれ以上の価格に値上げしても、今までの繁盛を維持できると思います。

「安い」から人気があるのでは無くて、「美味しい」から人気があると考えるのが正しいと思います。

コスト重視の発想はコモディティー市場でなら通用しますが、品質重視のコミュニティー市場では通用しません。

 

コミュニティー市場は拡大中

外食チェーン店の店舗から、街で人気の「とんかつ屋」さんにお客さんが移動することがあっても、その反対は無くなっているような気がします。

理由は、外食チェーン店はありふれた商品・サービスが流通しているコモディティー市場で商売をしていて、街で人気の「とんかつ屋」さんは、例えば、そのとんかつ屋さんでトンカツを食べたいお客さんがやって来るコミュニティー市場で商売しているからだと思います。

この現象は、街で人気の「とんかつ屋」さんだけでなくて、年老いた珈琲豆焙煎屋が属する珈琲商売でも見られる現象です。

コーヒー市場では、コーヒー豆自家焙煎店の作り出すクラフトコーヒーに興味をもっているクラフトコーヒーコミュニティーが拡大を続けています。

 

事業よりも生業が元気になって行く

もしかしたら、これからは、飲食店・小売店に限定すれば、事業よりも生業が元気になって行くのかもしれません。

おそらく、「とんかつ屋の悲劇」という言葉は、事業の視点から出て来た言葉だと思います。

しかし、生業と事業は全く違った商形態で、同じ基準で評価するのは無理だと思います。

くじらのビジネスとプランクトンのビジネスは、全く異なった領域のビジネスだと年老いた珈琲豆焙煎屋(エカワ珈琲店の店主)は考えています。

 

【参考】クジラ商売とプランクトンの商売の違いについては、下のリンク先ページの記事でエントリーしています。

www.ekawacoffee.work