公的年金の定義を『年金だけで、それなりの生活が営める』とするなら、国民皆保険が原則の公的年金制度は破綻しているのかもしれません。
というよりも、国民年金という公的年金制度は、その始まりから破綻しているわけです。
21世紀の現在(2020年)、公的年金だけでゆとりを持って暮らせる高齢者の比率が減少傾向にあるわけですから、『年金だけで、それなりの生活が営める』公的年金制度(厚生年金制度)は破綻に向かっているのかもしれません。
年金だけでは月々5万円足りない
2019年初夏、金融庁が発表した報告書が話題になっていました。
いつも楽しみに読ませて頂いているブログ「たぱぞうの米国投資」によると、夫が65歳以上で妻が60歳以上の平均的な無職世帯の場合、毎月の支出平均が25万円なのに対して、公的年金からの収入が毎月20万円だから、当然、5万円足りなくなるので、その不足分を金融資産で補う必要があるという内容の報告書です。
不足分5万円の補い方
その不足分5万円の補い方ですが、証券行政を司る金融庁の報告書ですから、手持ちの金融資産を賢く運用して補う方法を提言しています。
厚生・労働行政を司る厚生省は、年金収入の不足分を働いて社会参加することで補う方法を推奨しているようですから。
65歳の公的年金満額受給年齢の65歳に到達して、まあまあ満足な老後生活を楽しむのに5万円足りない人たちは、現役時代、終身雇用が保障されている会社や役所で真面目に働いて定年を迎えて退職した人たちで、日本の高齢者の半数以上を占めている人たちだと想像しています。
団塊の世代はバブル崩壊の経験を持っている
そして、65歳代後半~70歳代中頃の世代は、1990年代のバブル崩壊で大なり小なり損をした経験を持っています。
手持ちの金融資産の大半を、証券投資や不動産投資に投入する勇気は持っていないと思います。プラス資産が、僅か2年~3年でマイナス資産になるのを経験しているわけですから。
ということで、まだまだ元気な65歳代後半~70歳代中頃の高齢者は、公的年金プラスアルファーの収入を、働いて稼ぐことで手にしようと考えるわけですが、なかなか本人の希望とマッチングする仕事が無いようです。
アメリカでも「年金だけでは足りない老後生活」進行中
65歳で定年退職して、2000万円の退職金を手にして、公的年金の収入が毎月20万円あったとしても、10年もすれば、手持資金の減少に怯える暮らしがやって来る可能性が高いような気がします。
アメリカの平均的な高齢者の現実をルポしたワシントンポスト紙(WEB版、2019年)の記事などに接したりすると、「年金だけでは足りない老後生活」は、日本だけでなくて、高齢化社会に突入している経済先進国と呼ばれている全ての国々で発生している問題なのかもしれないと考えたりしている今日この頃です。