エカワ珈琲店の出来事

主に、エカワ珈琲店の日常の物語をお届けしています。

あの頃と今、エカワ珈琲店の一年

去年の今頃、私はまったく違う日々を生きていました。

長期入院していた妻が退院して一か月。

身体障害者手帳1級となり、介護なしの生活は不可能になっていました。

介護といっても、主な仕事は透析の付き添いです。

しかし、透析治療以外にも診療や検査があり、月曜から金曜はほぼ毎日病院へ。

店を開けることも、通信販売の発送をすることも難しい状況でした。

営業できるのは土日だけ。それも一日4時間ほど。

通信販売の発送も土日に限られ、焙煎コーヒー豆の売上は減り続け、商売というより小遣い稼ぎのアルバイトのような規模になっていました。

それでも、夫婦ふたりで受け取る公的年金は十数万円ほど。

医療費は無料とはいえ、健康な人には必要のない費用が積み重なり、先の見通しは立たないまま。

「守るべき者」のために、どうにかして稼がなければならない。

その思いだけで、通信販売に活路を見出そうと考え始めていた頃でした。

しかし、クリスマスの頃に私が病気で緊急入院し、その二日後に妻は亡くなりました。

 

「守るべき者」がいなくなった今

今の私は、自分ひとりが食べていければそれでいい身です。

焙煎技術には自信がありますし、エカワ珈琲店の豆を求めてくれるお客さんも一定数います。

年金に少し上乗せできれば十分暮らしていける。

そう思えるようになりました。

3月の中頃から、ナノロースターとしての商売を再開しました。

当初は週2日、土日の3時間営業が精一杯でしたが、体力も徐々に戻り、今では週5日、3時間ずつ店を開けています。

ところが、販売量は3月の頃とほとんど変わりません。

常連さんの来店日が分散しただけで、多い日でも数人、少ない日はゼロか1人。

3時間店を開けて誰も来ない日が続くと、さすがに気持ちが沈みます。

 

それでも、前を向くために

去年は物理的な理由で週末営業しかできませんでしたが、今年は違います。

週5日営業できている今、通信販売に頼る必要もありません。

だからこそ、店舗の「閑古鳥」を追い払うために、もう少し工夫してみようと思い始めました。

店舗販売の基本は、やはり 地域密着・ローカル。

この原点に立ち返り、地元の方にもっと気軽に立ち寄ってもらえる店づくりを試してみようと考えています。

去年の私は「守るべき者」のために働いていました。

今の私は、自分の生活を静かに支えるために働いています。

同じ焙煎でも、心の置きどころが変わると、見える景色も変わるものです。

エカワ珈琲店の一年は、そんな私自身の変化とともに流れてきました。

これからの一年は、どんな風に進んでいくのでしょうか。

小さな焙煎機の音を聞きながら、ゆっくりと考えているところです。

でも、独りぼっちは寂しいものです。

 

 

2026年6月24日現在、和歌山市雑賀屋町の店舗でのみ販売しています。

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