
コーヒーと聞けば、多くの人が思い浮かべるのは、焙煎した豆を挽き、お湯を通して淹れる、あの香り高い飲み物だろう。
カフェインが含まれていて、甘いデザートとよく合う――そんな一般的なイメージは、今も昔も変わらない。
けれど、長年コーヒー豆を焼き続けてきたエカワ珈琲店には、もう少し違った“見え方”がある。
何の役に立つわけでもないが、焙煎機の前で過ごしてきた年月の中で、自然と心に刻まれた「コーヒー10箇条」というものがある。
ここに書き留めておこうと思う。
① コーヒーは、世界を動かす大きな商品
石油に次いで取引量が多いと言われてきたコーヒー。
数字の細部は時代とともに変わっても、世界経済の中で重要な農産物であることは揺るがない。
② 世界で最も愛される嗜好飲料
水の次に飲まれている飲料――これは今も大きく外れていない。
世界中で1日に飲まれるコーヒーは、なんと約20億杯。
想像すると、ちょっとした壮大な風景が浮かんでくる。
③ コーヒーは人々の生活を支えている
アジア、アフリカ、中南米、カリブ海……。
数十を超える国々で栽培され、2500万人以上の生計を支える作物でもある。
中米・南米・カリブ海が世界の生産量の大半を占める構図は、今も変わらない。
④ アラビカとロブスタ
コーヒーの二大品種はアラビカとロブスタ。
市場の主役はアラビカで、風味の良さから多くの焙煎所がこの品種を中心に扱う。
ロブスタはロブスタで、エスプレッソやインスタントで欠かせない存在だ。
⑤ 喫茶店ビジネスの成長
アメリカでは2000年代・2010年代に喫茶店ビジネスが大きく伸び、日本でもスターバックスが登場して以降、チェーン店が確実に増えていった。
2020年代に入って成長はやや落ち着いたが、コーヒーを楽しむ文化そのものは、むしろ多様化している。
⑥ コーヒーベルトの国々
世界のコーヒーの90%は、赤道を挟んだ“コーヒーベルト”と呼ばれる地域で生産されている。
ブラジル、ベトナム、コロンビアがトップ3。
ただ近年は、気候変動が生産地に深刻な影響を与え始めている。
⑦ フェアトレードの広がり
市場全体から見ればまだ小さな割合だが、フェアトレードコーヒーは年々存在感を増している。
消費者の意識が変われば、市場もゆっくりと変わっていく。
⑧ 日陰栽培への注目
森林を守りながら高品質の豆を育てる“シェードグロウン”。
環境への配慮が求められる時代、こうした栽培方法は再び注目を集めている。
⑨ 焙煎豆は生鮮食品
生豆は保存がきくが、焙煎豆は鮮度が命。
だからこそ、産地で焙煎して輸出するというモデルは広がりにくい。
焙煎所としては、ここに“商売の本質”があるようにも思う。
⑩ コーヒーの歴史は、光と影の歴史
コーヒーの普及は、植民地主義と深く結びついている。
その影の部分を忘れずに、未来のコーヒーをどう育てていくか――これは今の時代だからこそ、より強く問われているテーマだ。
■おわりに
こうして並べてみると、コーヒーはただの飲み物ではなく、
世界の歴史や経済、人々の暮らしがぎゅっと詰まった“物語”のように思えてくる。
その物語の末端に、和歌山市の小さな焙煎所であるエカワ珈琲店がある。
焙煎機の前に立ち、豆のはぜる音を聞きながら、私は今日もその物語の続きを見ている。


