
妻と暮らした三十数年、私たち夫婦の生活の中心には、いつもパパママロースターとしての仕事がありました。
自宅兼店舗兼焙煎工房という環境では、暮らしそのものがコーヒー豆の焙煎と販売とともに流れていきます。
焙煎機の音も、豆のはぜる香りも、すべてが私たちの日常でした。
そんな日々に、もうひとつの習慣が加わったのが2000年代から2010年代にかけての約20年間。
夫婦で通ったスポーツジムです。
軽い運動とお風呂、そして店のお客さん以外の誰かと交わすちょっとした会話。
それらが、私たちの暮らしに小さな彩りを添えてくれていました。
しかし、2020年の春、新型コロナウイルスの流行でジム通いは中断。
そして昨年(2025年)12月、妻が亡くなり私の体調不良もあって、焙煎の仕事も休業せざるを得なくなりました。
独りぼっちの74歳。
「悲しくて、寂しくて、むなしくて、やりきれない」
そんな気持ちを抱えながら過ごす日々の中で、少しでも心が軽くなるならと、今年3月半ば、三か月ぶりに焙煎の仕事を再開しました。
パパママロースターから、ジジだけロースターへ。
肩書きは変わってしまったけれど、焙煎機の前に立つと、妻と過ごした時間の温もりがふっとよみがえります。
この二つ・・・焙煎の仕事と、少しずつ再開した運動・・・が、私の心の痛みをほんの少し和らげてくれています。
3月は体調も万全ではなく、おそるおそるの再スタートでした。
それでも4月半ばになると、健康状態も体調も少しずつ回復し、焙煎の仕事も“まあまあ頑張れる”ところまで戻ってきました。
そして5月。
連休明けからスポーツジムにも頻繁に通いはじめ、プールで500メートル歩くだけでは物足りなくなり、休憩を挟みながら25メートルを10本泳ぐようになりました。
連休明けの週は3回、翌週は4回(4日連続で)。
結果、疲れがたまったのか、体調が再び下降し、先週の金曜日からは安静にしています。
5月20日の木曜日、体調が少し戻ったので、お城の中を休憩しながら1時間近くかけて散歩してきました。
ゆっくりとゆっくりと休憩を何度もしながらの散歩でも、久しぶりに体を動かすと気持ちが晴れます。
4月中頃から体調が上向き始めた頃、焙煎が好きで好きでたまらない私は、気がつけば半月で80kgものコーヒー豆を焙煎していました。
しかし、エカワ珈琲店の現在の月間販売量は30数kgほど。
当然、大量の売れ残りが出ます。
その売れ残った豆で自家製のニオイ袋を作り、お客さんに無料で配っています。
この一週間、体調不良で焙煎を控えていたので在庫は減りましたが、やはり商売である以上、今後は昨年までのように「売れ行き」に合わせて焙煎量を調整しようと考えています。
焙煎は趣味であり、生きがいでもあります。
でも、無理をしないこと。
そして、妻とともに築いたこの店を、これからは私のペースで続けていくこと。
それが、今の私にできる最善の“日常の再構築”なのだと思っています。


