
朝いちばんのコーヒーは、果物と同じくらい、あるいはそれ以上の抗酸化物質を含んでいると言われています。
だからでしょうか。コーヒーは、朝の空気にとてもよく似合います。
眠りから覚めた体に、そっとスイッチを入れてくれる飲み物です。
けれど、世界を見渡すと、その「目覚めの一杯」の姿は実にさまざまです。
イタリアでは濃厚なエスプレッソを一気に飲み干し、
日本では湯気の立つドリップコーヒーをゆっくり味わい、
ベトナムでは練乳の甘さとともに朝を迎える人もいます。
コーヒーは今や、世界で最も愛されている飲み物のひとつ。
その豆は、熱帯地域の数十か国以上で栽培され、
ブラジルが最大の生産国、続いてベトナムが世界第2位の地位を占めています。
ブラジルやインド、メキシコ、インドネシアのような例外を除けば、
多くのコーヒー生産国は経済規模の小さな国々です。
国際フェアトレード財団によれば、
世界で約1億3000万人もの人々がコーヒー生産に生活を依存しているといいます。
朝の一杯の裏側には、これほど多くの人の暮らしがつながっているのです。
2020年代に入って、コーヒー豆の価格は急騰しています。
気候変動による不作、物流コストの上昇、世界的な需要の増加──
そのどれもが複雑に絡み合い、コーヒーの値段を押し上げています。
コーヒーのサプライチェーンは、長くて繊細な旅路です。
赤道近くの農園で、ひと粒ずつ手で摘まれるチェリーから始まり、生豆として選別され、港へ運ばれ、貿易業者・加工業者・輸出入業者の手を渡り歩き、ようやく焙煎業者のもとへたどり着きます。
そして最後に、焙煎された豆が袋に詰められ、消費者の朝の一杯として湯気を立てるのです。
この長い旅路のどこか一か所でも負担が増えれば、その影響は川の流れのように下流へと広がっていきます。
農園の収穫量が減れば、生豆の価格が上がり、輸送費が高騰すれば、港から港への移動コストが跳ね上がる。
焙煎業者は仕入れ値の上昇に頭を抱え、最終的には、消費者が手に取る一杯の値段に反映されてしまう。
コーヒーの価格変動は、単なる数字の上下ではありません。
その背後には、農園で働く家族の暮らしがあり、輸送に携わる人々の労働があり、焙煎所の小さな焙煎機の前で汗を拭う職人の姿があります。
世界のどこかで起きた変化が、私たちの朝のカップに静かに影を落とす──
コーヒーとは、そんなふうに世界とつながっている飲み物なのだと思います。
世界中の都市では、朝の通勤時間帯にコーヒーを求める人々でカフェがにぎわいます。
特に人気なのは、ミルクベースのコーヒードリンク。
その滑らかな味わいが、世界のカフェチェーンの成長を支えてきました。
多くの人が「やさしい口当たりのコーヒー」を求めているのかもしれません。
それでも、エカワ珈琲店はブラックコーヒーが好き
そんな世界の流れとは少し距離を置いて、和歌山市のエカワ珈琲店は、昔ながらの日本の珈琲屋のスタイルを大切にしています。
ミルクも砂糖も加えず、焙煎した豆そのものの香りと味わいを楽しむブラックコーヒー。
その一杯のために、ブラックでおいしく飲める焙煎だけを行い、その豆だけを販売しています。
世界のコーヒー文化は多様で、どれも魅力的です。
でも、私たちはやっぱり、豆の個性がそのまま立ち上がる、素朴で誠実なブラックコーヒーが好きなのです。
朝の静かな時間に、湯気の向こうでふわりと広がる香りを感じながら、今日もまた、焙煎したての豆を手に取る。
そんな日々の積み重ねが、エカワ珈琲店のリズムになっています。

