
2016年から2018年の夏頃までは、私にとって試練の連続だった。
連れ合いの体調不良と入院、二匹の愛猫の病院通い、そして私自身の不調。
当時は神経痛だと思っていたが、いま振り返れば心不全の初期症状だったのかもしれない。
そんな状態では、商売をまともに続けられるはずもなく、週休3日、営業時間は昼前から夕方までの4時間ほど。
ほぼ「開店休業」と言っていい日々が続いた。
当然ながら、焙煎コーヒー豆(クラフトコーヒー)の販売量も売上も急降下し、客数も減っていった。
貯えは底をつき、心も体もすり減っていくばかりだった。
2018年秋、再び店に立つ
そんな中、2018年の秋頃から、私は再び店に立つ時間を増やした。
定休日を日曜と祝日のみに戻し、営業時間も午前9時から午後4時へ。
「ほぼリタイア生活」には、まだ早すぎたのだ。
結局、以前のセミリタイア生活に逆戻りした形だが、それでも働けることがありがたかった。
同時に、長年寄り添ってくれた愛猫たちとの別れもあった。
モモは2018年7月に20歳3か月で、ピューは2019年7月に21歳4か月で旅立った。
家族を見送るたび、胸の奥にぽっかりと穴が開いた。
それでも、連れ合いと私の体調は少しずつ回復し、あるいは「不調との付き合い方」が上手くなったのか、2018年の秋には商売がある程度まともに回るようになっていた。
すると不思議なもので、売上もゆっくりと回復していった。
コロナ禍と商売の転換
2020年1月までは、売上はゆっくりながらも上昇していた。
そこに新型コロナウイルス感染症のパンデミックが襲う。
3月・4月・5月は恐怖心もあって、まともに商売ができなかった。
せっかく回復していた売上は、2017年頃の水準に逆戻りした。
そこで2020年6月、思い切って店舗を改装し、インストアショッピングからアウトストアショッピングへ 商売の仕方を大きく変えた。
家庭向けの小売と通信販売はほとんど影響を受けなかったが、喫茶店、日本料理店、カラオケ喫茶、ライブハウス、宿泊施設などへの業務販売は壊滅的な打撃を受けた。
テレワークの普及で、オフィス向けの卸売も同じく大きく減った。
商売とは、本当に時代の風に左右されるものだと痛感した。
2021年、69歳の私
2021年6月、私は69歳になっていた。
世間では「高齢者」と呼ばれる年齢だ。
だが、体力はまだ残っていたし、何より、これまで積み重ねてきた珈琲の知識・経験・技術がある。
販売量が今(2021年)の2倍、3倍になったとしても、80代前半までは夫婦二人でやっていける自信があった。
公的年金だけでは暮らしていけない。
だからこそ、働いて収入を得る必要がある。
幸い、珈琲豆自家焙煎という特殊な商売は、身体が動く限り続けられる。
それは、私にとって大きな救いだった。
バブル崩壊以後の自営業者として
バブル経済崩壊以後の20数年間、個人商店や個人飲食店を営む自営業者にとって、明るい時代とは言えなかった。
私自身、何度も自営業を選んだことを後悔した。
しかし2021年の私は、脱サラして自営業者になった自分に感謝していた。
平成の30年間を四苦八苦しながら駆け抜け、嫌になるほどお金に苦労した。
それでも、その年月が、珈琲と商売に関する技術・経験・知識を私に与えてくれた。
高齢化社会とは、高齢者が働き続ける社会 という意味なのだろう。
そして私は、身体が動く限り、年齢相応に働き続けられるはずだと信じている。
珈琲とともに歩んできた人生は、これからも続いていく。

