
去年の秋、私は「守るべきもの」を胸に抱えていました。
今はもうこの世にいない妻です。
私たちの日常(日々の暮らし)を支えるために、小さな自家焙煎の商売を続けていました。
コーヒー豆自家焙煎の人気が高まりつつあるのを肌で感じていたこともあり、「やれば売れる」という確かな手応えもありました。
土日だけの営業でも、通販を伸ばせば売上は増やせる。
そのためには、エカワ珈琲店をもっと知ってもらう努力(宣伝活動)をしなければならない。
去年の秋の私は、そんな未来図を描き、「来年の3月頃から積極的に宣伝活動を始めよう」と考えていました。
しかし、今年の私は違います。
去年の12月、妻は旅立ちました。
守るべきものは、もうありません。
自分ひとりが食べていければそれで良い。
今のコーヒー豆自家焙煎商売の環境なら、宣伝をしなくても、週末だけの商売でも、生活に困らない程度には稼げます。
けれど、ひとり残された私は、寂しさと悲しさと虚しさの中で、ぽっかりと空いた時間を持て余していました。
誰かにその気持ちを話すと、「何か趣味に没頭するのがいいですよ」と、何人かの人が同じ言葉をかけてくれます。
私の趣味は、「コーヒーとコーヒーの仕事」です。
だから私は、もう一度そこに戻ってみようと思っています。
ただし、もう“頑張って稼ぐためだけの商売”ではありません。
積極的に宣伝して売上を増やす必要もない。
誰かを守るためでもない。
これからは、自分がやりたい形で、自分のペースで、趣味としてのコーヒー豆自家焙煎商売を続けていく。
健康状態も体力も、まだ回復途上です。
だからこそ、焦らず、無理をせず、「徐々に、徐々に」自分の思い描く形に近づけていければいい。
独りぼっちになってしまった爺さんが、それでも毎日を生きていくためのリズムとして。
そして、妻と共に歩んできた時間の延長線上に、静かに焙煎機の音が続いていくように。
そんな気持ちで、私はまたコーヒーの仕事に向き合っています。
ということで、私はまず、先日「エカワ珈琲店のブログ」に投稿した記事のような商売を目指してみようと思っています。
守るべきものを失い、ひとりになってしまった今、無理に商売で稼ぐ必要はありません。誰かに合わせる必要もない。
ただ、自分のペースで、自分のやりたい形を探していけばいい。
とはいえ、健康状態も体力も、まだ思うようには戻っていません。
掃除ひとつ、レイアウト変更ひとつでも息が切れてしまう。
そんな自分に腹が立つ日もありますが、それでも、できる範囲で少しずつ前に進めばいいのだと思うことにしています。
「徐々に、徐々に」 、 この言葉が、今の私にはしっくりきます。
焦らず、無理をせず、自分の体と相談しながら、自分が心地よいと思える形のコーヒー豆自家焙煎商売を続けていく。
それは、今までの商売とは、少し違う形になるのかもしれません。
でも、焙煎機の前に立つと、妻と一緒に過ごした時間がふっとよみがえり、寂しさの中にも、どこか温かいものが残ります。
これからの私は、「稼ぐための商売」ではなく、「生きるためのリズムとしての商売」を続けていくつもりです。
そのリズムが、また私を日々の暮らしへとつなぎとめてくれることを願いながら。

