エカワ珈琲店の出来事

主に、エカワ珈琲店の日常の物語をお届けしています。

商売よりも、いまは“生きるリズム”としてのコーヒー

再開の3月、静かな手応え

3か月ぶりに焙煎コーヒー豆の販売を再開した3月。

正直なところ、長い休業のあとにお客さんが戻ってきてくれるのか、不安がなかったわけではありません。

ところが、ふたを開けてみれば——

販売量は33kg、売上は約23万円。

100gあたりの平均単価は700円台に乗りました。

比較として、2025年10月は40kg・26万円・平均650円。

販売量も売上も当時より少ないものの、単価はしっかり上がっています。

週末の2日だけの営業で、宣伝らしい宣伝もしていないのに、この数字。

我ながら、十分すぎるほどの成績だと思っています。

 

あの頃と今の私

2025年10月の私は、身体が弱っていく妻を守らなければという思いでいっぱいでした。

だからこそ、商売にも張り合いがあり、売上を伸ばそうという気持ちも強かった。

しかし今年になって、私は独りになりました。

守るべき妻はもういません。

高齢のひとり暮らしに、そんなにお金は必要ありません。

年金もありますから、商売で無理に稼ぐ必要もない。

だから今の私は、

「赤字にならなければそれでいい」  

そんな気持ちでコーヒーの商売を続けています。

 

それでも湧いてくる「やりたいこと」

不思議なもので、商売で稼ぎたいという気概は薄れても、「コーヒーとコーヒーの仕事」については、次々とアイデアが浮かんできます。

新しいブレンドを試してみたい。

焙煎のプロファイルを少し変えて、味の変化を確かめたい。

小さなイベントや、焙煎室の見学会のようなものも、いつかまたやってみたい。

テイクアウトコーヒーの販売や、立ち飲みコーヒーのコーヒースタンドも豆売りと併設したい。

そんな思いが、ふとした瞬間に胸の奥から湧いてくるのです。

ただ、健康状態も体力もまだ回復途上で、思いついたそばから行動に移せるほどの勢いはありません。

朝は調子が良くても、夕方には体が重くなる日がほとんどです。

「今はまだ無理だな」と自分に言い聞かせることも多い。

それでも、アイデアが浮かぶということ自体が、私にとっては大きな励ましになっています。

焦らず、無理をせず、少しずつ、できる範囲で実行していければと思っています。

体力の回復に合わせて、ひとつずつ形にしていければ十分です。

守るべきものが無くなってしまった今、この“ゆっくりとした歩み”そのものを楽しんでいきたいと思っています。

 

趣味としての商売、商売としての趣味

私にとってコーヒーは、趣味であり、仕事であり、そして毎日のリズムそのものです。
朝の空気に焙煎の香りが混じるだけで、「今日も一日が始まった」と心が落ち着きます。

もしこのコーヒーの仕事をやめてしまえば、独りぼっちの毎日は、きっと途端に色を失ってしまうでしょう。

静かすぎる部屋に、焙煎機の音も、豆を挽く音もなくなる。

そう想像するだけで、胸の奥が少し冷たくなります。

だからこそ、今の私にとって大切なのは、「商売繁盛」よりも「コーヒーを続けること」。

売上の数字よりも、豆を触り、香りを確かめ、誰かがその味を楽しんでくれるという事実のほうが、ずっと大きな意味を持っています。

3月の営業成績は、そんな私にとっての静かな励ましでした。

派手さはなくても、確かな手応えがある。

「まだ続けていいんだよ」と背中をそっと押してくれるような、そんな優しい結果でした。

これからも、無理をせず、楽しみながら、独りになってしまった私の新しい日常を、コーヒーとともに歩いていこうと思います。

急がなくていい。

焦らなくていい。

コーヒーの香りに包まれながら、ゆっくりと、自分のペースで進んでいけばいいのだと、最近ようやく思えるようになってきました。