
妻が旅立って、まもなく一か月が経とうとしています。
私自身も「心不全」で入院していましたが、主治医の配慮もあり、通常よりも短い10日間で退院させていただきました。
とはいえ、退院後の生活は決して楽なものではなく、体力も気力もまだまだ本調子にはほど遠い状態です。
それでも、少しずつ日常を取り戻そうと、できることから手をつけてきました。
この二週間あまりの間に、妻の葬儀にまつわる諸々の手続きや支払い、病院への清算、そして長らく手つかずだった振込関係の支払いなど、山積みになっていた事務的な用事を一つひとつ片づけてきました。
書類を整え、通帳を開き、電話をかけ、窓口に足を運ぶ——そのひとつひとつが、思いのほか心身にこたえる作業でしたが、なんとか終えることができました。
ようやく、ほんの少しだけ肩の荷が下りたような、そんな気がしています。
もちろん、心の中の重さはまだ消えませんが、それでも「ここまで来られた」という実感が、わずかながらも支えになってくれています。
毎日、朝と夕に一度ずつ、ゆっくりと歩くようにしています。
歩幅は小さく、歩数も多くはありませんが、季節の移ろいを感じながら、風の匂いや空の色に目を向けて歩いていると、体の奥から少しずつ力が戻ってきているのを感じます。
歩くたびに、ほんのわずかでも「生きている」という実感が、足元からじんわりと湧いてくるようで妻を亡くした寂しさを少しだけ和らげてくれます。
けれど、コーヒーの仕事を再開するには、まだ体力が足りません。
焙煎機の前に立ち、豆を選び、火を入れ、香りを見極める——その一連の動作を思い浮かべるだけで、今の自分にはまだ遠いと感じます。
何より、「心不全」の治療はこれからが本番。
焦って無理をすれば、せっかくの回復も水の泡になってしまいます。
だからこそ、今はしっかりと身体を整えることが先決。
自分にそう言い聞かせながら、日々を過ごしています。
日中は、特に何をするでもなく、家の中でぼんやりと過ごしています。
テレビをつけても、パソコンを開いても、どこか上の空。
ふとした瞬間に、妻のことを思い出しては、ため息がこぼれます。
あの人がいた日々の温もりが、今は静けさの中に溶けて、時折、胸に沁みるように響いてきます。
気持ちが沈んでいるのは、自分でもよくわかっています。
けれど、私の趣味は「コーヒー」であり、「コーヒーの仕事」そのもの。
それができない今、心の拠り所を見失っているのかもしれません。
それでも、このままではいけない。そう思う自分も、確かにここにいます。
どこかで、もう一度火を灯したいという気持ちが、静かに息をしているのを感じます。
おそらく、今月(2026年1月)の終わりには治療の見通しも立ち、そこからは体力の回復に努めていけるはずです。
焙煎機の前に立ち、豆の香りに包まれる日を思い描きながら、少しずつ準備を始めようと思います。
まずは、再開の塩梅(あんばい)を考えることから。
どんなペースで、どんな形で、どんな気持ちで再び火を灯すのか。
無理なく、けれど誠実に、自分らしいやり方を探っていきたいと思います。
その構想に沿って、WEBサイトやショッピングサイトも、少しずつ手を入れていこうと思います。
文章を整え、写真を見直し、言葉のひとつひとつに、今の自分の気持ちを込めていけたらと思っています。
焦らず、でも止まらず。
冬の光のなかで、静かに、次の季節を待っています。
やがてまた、香ばしい香りとともに、心がふっと温まるような時間が戻ってくることを信じて。

