南海和歌山市駅の再開発事業ですが、2017年にオフィス棟が完成して、2018年の4月からは、和歌山市民図書館や商業施設、それにホテルなどの建設工事が始まっています。2019年2月からは、駅前広場整備工事も始まっています。
南海和歌山市駅の再開発事業で最も注目されているのが、約500メートル離れた場所に立地している和歌山市民図書館の南海和歌山市駅への新築移転です。
当初、2019年10月に移転開館の予定でしたが、計画よりも2か月遅れて2019年12月に開館する予定とのことです。
何はともあれ、人が集まる図書館運営ができれば、再開発施設やその周辺の賑わいに貢献してくれると期待されています。
和歌山市民図書館の移転と民間委託
図書館に集客効果があるかどうかは定かでありませんが、南海和歌山市駅という交通の便の良い立地に和歌山市民図書館が移転するのは、悪いことでは無いと思います。
南海和歌山市駅に移転する新しい和歌山市民図書館の運営は、「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」に民間委託されるとも報じられています。
そして、図書館の入り口付近には、スターバックスコーヒーが出店するとも報じられています。
2013年の佐賀県武雄市、2014年の神奈川県海老名市、2016年の宮城県多賀城市、2017年の岡山県高梁市に続く5番目のTSUTAYA図書館が、2019年10月開館予定の和歌山市民図書館だと報じられていますが、人口30数万人クラスの中核都市では初めてのツタヤ(TSUTAYA)図書館となります。
これまでの図書館の役割は
現在の市民社会は、知識や情報の共有を基礎にして成り立っているのだと思います。そして、市民が、豊富な知識と情報に触れることのできる場所ということに、地域の公共図書館の存在意義があったのだと思います。(インターネット普及以前では)
インターネット普及以前は、豊富な知識と情報の源は新聞・雑誌・書籍だったわけですから、図書館の価値の源泉は蔵書だったと思います。
書籍の購入費用が高くて、全ての市民が思うように書籍を蔵書するのが困難だったわけですから・・・、例えば、その昔の百科事典や辞書や専門書の購入価格を思い出してください。
現在の図書館は
現在(2019年1月)、例えば、レポート作成の資料探しなどで、図書館が蔵書している百科事典や辞書や専門書を利用する必要は無くなっています。
インターネット内のオンライン情報供給源が、知識や情報を必要とする市民から図書館の必要性を奪ってしまっています。特に、子供や学生、それに研究熱心な働き盛りの大人たちから・・・。
知識や情報を図書館で入手するよりも、オンライン情報供給源から入手する方が簡単で便利ですから、書籍の保管庫としての図書館の存在価値は薄くなっています。
電子書籍の登場と図書館の在り方の変化
携帯電子書籍端末に約1000冊の電子書籍が保存できて、価格がリーズブルで、誰でも比較的簡単に電子書籍を出版できます。また、電子書籍に絶版は有り得ないので、公共図書館で保管しておく必要もありません。
電子書籍の登場が、書籍の保管庫としての公共図書館の在り方を変えて行くのだと思います。
その昔、より多くの知識・情報を得るのに図書館が活用されていました。21世紀の現在、必要な知識・情報は、信頼・信用のできるオンライン情報源(例えば、Wikipedia)から得ることができます。
昔ながらの書籍の保管庫としての公共図書館は、その役割を縮小して行くのだと思います。しかし、これからの公共図書館も、これまでの公共図書館と同様に1つの場所として地域に無くてはならない重要な役割を担って行く可能性が高いと考えています。
こからの図書館の役割は
地域の情報拠点として、地域の交流拠点として、地域の誰もが気軽に利用できて、情報・知識の重要性を啓蒙して生涯学習の楽しさ・必要性を教えてくれるのが、これからの公共図書館の重要な役割になって行くような気がします。
レベルの高い公共図書館の存在が、素晴らしい地方公共団体の条件の一つだとも言われているわけですから、南海和歌山市駅に移転新築される和歌山市民図書館には期待しています。(集客力ではなくて、地域住民の役に立つかどうかということで)
図書館司書の役割ですが、インターネット普及以前の司書よりも数段重要になって来ているように思われます。
新しい和歌山市民図書館は
その昔、10代の頃(半世紀前)、公共図書館は子供たちや若者たちの遊び場でもありました。図書館の読書室には、10代の若者たちが、学習を兼ねてたむろしていたものです。また、若者たちの待ち合わせ場所としても、使われていました。
現在(2019年)の子供たちや若者たちは、ショッピングセンターで遊んでいても、公共図書館には寄り付きません。必要が無いのかもしれません。
新しい和歌山市民図書館に、昔の公共図書館のように子供たちや若者たちが遊びに来るのだろうか・・・。それは図書館を運営する人たちの運営能力に全面依存していると考えています。大変興味があります。
参考記事