その昔、半世紀近く前のこと、昭和48年(1973年)の夏のお話です。
学生だったエカワ珈琲店の店主は、夏休み、製氷と低温倉庫を商っている会社でアルバイトをしていました。
65歳の現在も20歳頃の若かった時も、暑さに弱いので、暑さ逃れを兼ねてのアルバイトだったわけです。
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で、そのアルバイト先で、2歳くらい年上の正社員の方と仲良くなって、その人に誘われて、夏場の毎週日曜日に、アルバイト先の普通トラックを無償で借用して、10数個の木箱の中に、これも無料の氷を満載して、アルバイト先出入りの取引先から安く分けてもらった清涼飲料水を木箱の氷の中に積み込んで、和歌山市とその周辺の観光スポットに出かけて行って、路上販売を営んだ記憶があります。
菓子パンと冷やした清涼飲料水を、街中の商店で販売している価格の2倍から3倍の値段で販売したのですが、いつもいつも飛ぶように売れて千客万来の有様で、僅か数時間で数万円を売上げたのを記憶しています。
アルバイトで稼いだお金よりも、アルバイトのアルバイトで稼いだお金のほうが多かったわけです。
高度経済成長によって皆の所得が増加していた時期で、ちょっと無理をすれば、誰もが、あこがれのマイカーを所有できるようになっていて、景観の良い観光スポットには、休日ドライブを楽しむ自家用車が溢れていた時代です。
休憩所や商店の存在しない、休日だけ賑わう観光スポットを見つけて、そこで菓子パンや冷やした清涼飲料水を販売すれば、少々値段が高くても飛ぶように売れるのは当たり前の話だったわけです。
この年の秋に発生した「石油ショック」によって、日本の高度経済成長が終了したのですが、もう十分に皆が豊かになっていたわけで、その後、経済の成長スピードは半分くらいにダウンしたのですが、十数年後に、あの「バブル景気」を体験するまでの間、日本経済は繁栄を謳歌することになります。
その1973年(昭和48年)、前年の1972年(昭和47年)に「週刊漫画アクション(発行元、双葉書房)」で連載が始まった上村一夫の劇画「同棲時代」が、由美かおる主演で映画化されて大ヒットしました。
上村一夫作詞・都倉俊一作曲で大信田礼子が歌っていた「同棲時代」もヒットして、『同棲』という言葉が流行語になったわけです。
1970年代の中頃、日本経済の高度成長によって、皆が一様に豊かになりつつある時代のことです。
そのころ、結婚しようと思えば、大金を用意する必要がありました。
結納金、結婚式と披露宴の費用、新婚旅行、賃貸新居の保証金、荷入れの費用と、『結婚』という儀式は、お金の必要な儀式でした。
親に資力がなければ、結婚する本人たちが、自分で費用を工面する必要がありますが、年功序列の賃金体系で、あれもほしい、これもほしいという年代の若者には、まず無理なことです。
お金が無いから、儀式をせずに入籍だけで済ませるということを、なかなか周囲が許してくれない時代でした。
ですから、都会では、『結婚』ではなくて『同棲』を選択する若い人が多かったのだと思います。