集英社新書『なぜ通販で買うのですか』(著者.斉藤駿)からの引用です。
電器メーカーも、このごろは、売るものが無くなったとみえて、ヘンテコなものを売り出し始めた。
電気米とぎキカイとか、電気バサミとか、電気カツオブシ削りとか、電気オカン器とか・・・
こういう広告を見ていると、ヘタな漫画よりもずっと面白い。
一日せいぜい一食か二食の米を、なにも電気でとがなくてもちっとも困らないし・・・
ハサミだって、縫製工場ででもない限り、なにも電気で切らなくたって・・・
カツブシ削り器もおかしい。・・・ポリエチレンの袋に入ったのをいくらでも売っているし・・・1万何千円も出してキカイを買う気になる人がいたら、よほどムダ使いの好きな人だ。
片方で即席ラーメンをすすり、片方で電気応用でカツオブシを削り、なんて光景は、頭にうかべてみるだけで、ずいぶんと楽しい。
もっとも、たのしんでばかりいてはわるい。
さいわいこの程度のお粗末なアイデアでよかったら、いささか持ち合わせがあるからタダで差し上げましょう。
○電気で靴をみがくキカイ
○電気でコーヒー豆をひくキカイ
○電気で髪を洗うキカイ
○電気でものを切るキカイ(みじん切り千六本サイの目なんでもできる)
○電気でおにぎりを作るキカイ
○電気貯金箱(たまった金額が表示されるが一杯にならないと絶対に開かない)
○電気で本をめくるキカイ
○電気めざまし器(加速度的に音が大きくなり、起きてコンセントを抜かなければとまらない)
○電気で霧を吹くキカイ
○電気靴(足底がポカポカ暖かい)
○電気ちゃぶ台(暖冷切り替え、のせた料理が冬は冷めず夏はひんやり)
○ポータブル電気釜(電気べんとう箱、出かけるとき仕かけておくと、お昼にほどよく炊き上がる)
○電気でぬかみそをかきまわすキカイ
○多チャンネルテレビ(一度に4つの画面が区切られてうつる、音はイヤホーンでどうど。)
○電気でマニュキアをするキカイ
○電気でガラスをふくキカイ
○電気衣服庫(ゼッタイかびず虫が食わない)
○電気センぬき器
○電気でねずみをとるキカイ
以上、『暮らしの手帖』1961年(昭和36年)5月・59号に、『暮らしの手帖』の名物編集長だった花森安治さんが書いた文章の一部です。
昭和36年当時の、花森安治さんの自称『お粗末なアイデア』ですが、それから40数年が経過した2007年までに、そのほとんどが実用化されています。
花森安治「暮しの手帖」初代編集長 (暮しの手帖 別冊 (連続テレビ小説『とと姉ちゃん』花山伊佐次のモチーフ 花森安治の本))
- 出版社/メーカー: 暮しの手帖社
- 発売日: 2016/07/08
- メディア: 雑誌
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【2007年2月21日に書いた記事を再掲載しています】