エカワ珈琲店の出来事

主に、エカワ珈琲店の日常の物語をお届けしています。

個人的な出来事

ジジだけロースターの日常が、ゆっくりと戻ってくるまで

妻と暮らした三十数年、私たち夫婦の生活の中心には、いつもパパママロースターとしての仕事がありました。 自宅兼店舗兼焙煎工房という環境では、暮らしそのものがコーヒー豆の焙煎と販売とともに流れていきます。 焙煎機の音も、豆のはぜる香りも、すべて…

夫婦で歩いた三十年、そしてこれから

去年の5月13日。 あと五日で、妻が退院すると決まっていました。 半年近い入院生活で荷物も多く、私は1日に何回か病院へ通い、少しずつ家へ持ち帰っていました。 運転免許証を返納するつもりで車を手放していたので、退院の日はタクシーで帰ることになり…

2016年から2021年― エカワ珈琲店店主の記録、商売の揺り戻し

2016年から2018年の夏頃までは、私にとって試練の連続だった。 連れ合いの体調不良と入院、二匹の愛猫の病院通い、そして私自身の不調。 当時は神経痛だと思っていたが、いま振り返れば心不全の初期症状だったのかもしれない。 そんな状態では、商売…

サラリーマンと自営業 ― エカワ珈琲店店主の回想、2015年まで

二十代、三十代の私は、ごく普通のサラリーマンだった。 公務員として働き、収入も待遇も、世間一般の「平均的な暮らし」の中にいたと思う。 だが三十代後半、私はその道を離れた。 年功序列の果実を受け取る前に、組織の空気に馴染めず、脱サラしてしまった…

風の強い土曜日に、店の奥で思い出すこと

4月4日の土曜日は、まるで季節外れの台風のような一日だった。 風は唸り、雨は横殴りで、店の前の通りを歩く人影もほとんど見えない。 そんな天気のせいか、店に来てくれたのは3人だけ。 しかも、3人とも正午(12時)から12時30分のあいだに集中して…

クリック広告とのお別れ

気がつけば、「エカワ珈琲店のブログ」を始めてから、もうずいぶん長い時間が経ちました。 最盛期には、ひと月でページビューが数万を超え、クリック広告だけで数万円ほどの収入があったこともあります。 あれは、いま思えば夢のような時期でした。 ところが…

コーヒーが導く、これからの時間

コーヒーの世界に沈んでいく余生 私の唯一の趣味は、コーヒーと、そのコーヒーにまつわる仕事です。 今年の秋には七十五歳。後期高齢者と呼ばれる年齢になります。 そんな私が、突然ひとりになりました。 妻に先立たれ、家の中の静けさが、時に胸の奥を冷た…

病院の待合室から見える景色

総合病院の循環器内科の待合室に腰を下ろすと、視界の端にあの廊下が見える。 車いす専用のトイレへと続く、あの短いようで長い廊下。 去年の夏、週に三度、妻と一緒に通った透析室へ向かう道のりだ。 タクシーを降り、車いすを押しながらエレベーターに乗り…

小さな一歩が、止まっていた時間を動かした日

新しいパソコンを開封した朝に 三月一日の日曜日に注文したパソコンが、四日の水曜日に届いた。 段ボール箱を開けたのは、翌日の木曜日。 新しい機械の匂いと、薄い保護フィルムの手触り。 そのどれもが、久しぶりに「未来」を感じさせてくれた。 初期設定に…

再開の一粒、静かな焙煎所にて

2月末の4日間、循環器のカテーテル治療のために入院していました。 たった 4日間とはいえ、74歳の身体にはなかなか堪える(こたえる)もので、退院した日に10メートル程度の距離を少し速足で歩いただけで息が上がる始末。 体力の衰えを、身をもって感じ…

静かな日々の中で思うこと

私たち夫婦は、長い間ふたりきりで暮らしてきました。 二人の間には子どもはおらず、親戚づきあいもほとんどない。 だからこそ、何かあったときに頼れるのは、いつもお互いだけでした。 病気になったときも、気持ちが沈んだときも、そばにいるのは妻だけ。 …

コーヒーの香りとともに、日常を取り戻すために

1週間前、妻の四十九日の法要を終え、永代供養のお墓に納骨を済ませました。 これで一区切り…のはずなのですが、心の中にはぽっかりと大きな穴が空いたままです。 脱力感という言葉では足りないほどの、深い静けさに包まれています。 妻の四十九日の法要の…

二人で焙煎していた日々を思い出しながら

久しぶりに焙煎機に火を入れました。ちょうど2か月ぶり、久しぶりの焙煎です。 手順を思い出しながらの作業は、どこかぎこちなく、ところどころ抜けてしまっていて、いつもなら20数分以上かけていた焙煎時間が、今回は20分ほどで終わってしまいました。 …

静かな悲しみと寂しさ、もう一度コーヒーを始める決意

妻を亡くしてからというもの、胸の奥にぽっかりと穴が空いたまま、時間だけが静かに流れていくようになった。 その穴は、ふとした瞬間に冷たい風が吹き抜けるようで、どれだけ日が経っても埋まる気配がない。 朝起きても、夜になっても、生活のどこかに彼女…

寂しくて寂しくてやりきれない

妻が旅立ってから、時間の流れがこれほど重く、ゆっくりと進むものだとは思わなかった。 時計の針は確かに動いているはずなのに、自分の中だけはどこか止まったままのようで、朝が来ても昨日の続きのまま心が動かない日が続いた。 最初の二週間ほどは、ただ…

「寂しさ」という名の時間

妻が旅立って、もうすぐ一か月が経とうとしています。 不思議なもので、日が経つにつれて、あの時の「悲しみ」は少しずつ形を変え、「寂しさ」として胸に広がってきました。 最初の頃は、ただただ涙がこぼれるばかりでしたが、今は、ふとした瞬間に、深いた…

冬の光のなかで、再び火を灯す日を思う

妻が旅立って、まもなく一か月が経とうとしています。 私自身も「心不全」で入院していましたが、主治医の配慮もあり、通常よりも短い10日間で退院させていただきました。 とはいえ、退院後の生活は決して楽なものではなく、体力も気力もまだまだ本調子には…

思い出の写真、妻(その3)

2024年10月、日赤入院中の写真です。この写真が一番最新の写真です。 2020年代の写真です 2020年代、バッチサイズ1kgの焙煎機を妻専用の焙煎機にしようと購入しました。

「ふたりだけの家族」——別れの冬に

十二月の冷たい風が吹き始めたころから、私の身体は少しずつ悲鳴を上げていた。 動けばすぐに息が切れ、胸の奥に鈍い痛みが走る。 けれど、そんなことに構っていられなかった。妻が入院していたからだ。 毎日、数時間は病院で過ごして、顔を見て、手を握って…

思い出の写真、妻(その1)

2025年12月27日の早朝(午前8時過ぎ)に亡くなった妻の写真を集めています。 私たち夫婦はバツイチの再婚同志で、結婚したのは1995年(平成7年)の秋です。 妻が34歳で、私が42歳でした。 インターネットに保存している写真の大半は、妻が40…

思い出の写真、妻(その2)

2025年12月27日の早朝(午前8時過ぎ)に亡くなった妻の写真を集めています。 今回は、その第2集です。 私たち夫婦はバツイチの再婚同志で、結婚したのは1995年(平成7年)の秋です。 妻が34歳で、私が42歳でした。 インターネットに保存して…

焙煎機をしばし休ませて

12月の風が冷たさを増す頃、妻の容態が少しずつ、けれど確かに、芳しくなくなってきました。 今は個室に入院しています。大部屋では面会が難しいため、少しでも長く一緒に過ごせるようにと、個室を選びました。 幸い、以前の大病院に比べれば費用も抑えら…

焙煎の香りと、病室の窓辺で

秋のはじまり、空気が少し冷たくなり始めた頃、妻が入院した。 9月に20日間の入院を経て、いったんは家に戻ってきたものの、わずか1週間の在宅生活ののち、10月3日から再び病院のベッドに戻ることになった。 それから今日、12月20日まで、妻は病…

昭和の終盤から令和へ──高齢化社会と珈琲商売

1980年代、昭和の終盤の日本を振り返ると、60歳代半ばともなると多くの人が社会活動から疎外されていました。 働いても得られるのはわずかな収入だけで、年金や貯えに恵まれた人は穏やかに暮らし、そうでない人は少額の年金と細々とした仕事で生活を支…

高齢化社会と、個人生業店のゆるやかな追い風

かつて、年齢構成がピラミッド型だった時代には、店主の年齢が上がるにつれて、お客さんの数も自然と減っていくのが常だった。 年を重ねることは、商売の終わりを静かに告げる合図のようでもあった。 けれど、今は違う。 高齢化が進んだこの社会では、私の年…

ささやかな記念日から始まった人生の流れ

2005年9月。長く続いた我が家の超貧乏生活に、ようやく一筋の光が差し込み始めた頃のことです。 私たち夫婦は再婚同士。 結婚してからの10年間は、まるで試練の連続でした。 不運が重なり、経済的にも苦しい日々が続きました。 それでも、少しずつ、…

高齢化の街で、違和感なく生きる

数年前まで、仕事を終えるとフィットネスクラブへ直行するのが日課だった。 健康のためという名目ではあったが、汗を流す時間は、心身を整える大切な儀式でもあった。 69歳まで続けていたその習慣は、今思えば、日々の営みの中にささやかな誇りを添えてく…

「運」を呼び込みたいコーヒー豆自家焙煎店

妻の体調は、まるで季節の移ろいのように、少しずつ、しかし確実に変わっていった。 最初は「お腹が痛い、お腹が痛い」と言っていたのが、やがて通院が日常になり、今では介護なしでは暮らせないほどになってしまった。 そんな妻の変化を見守りながら、ぼく…

「つき」を呼び込むために

秋の終わり、冬の気配が忍び寄る今日この頃。 空を見上げていても、なかなか「つき」がやって来てくれません。 そんな感覚が、胸の奥にじんわりと広がっています。 先月(2025年10月)、安易な気持ちで依頼してしまった電気工事が、思いもよらぬ形で跳ね…

暮らしの中心にあるもの

妻(エカワ珈琲店の婆さん)が入院して、もう40日以上経っています。 エカワ珈琲店の“婆さん”(小生の妻)は、今も病院のベッドで治療を受けていますが、どうやら今月中には退院できそうです。ほっと胸を撫で下ろす思いです。 入院直後の十日間ほどは、入院関…