エカワ珈琲店の出来事

主に、エカワ珈琲店の日常の物語をお届けしています。

コーヒーが導く、これからの時間

コーヒーの世界に沈んでいく余生 私の唯一の趣味は、コーヒーと、そのコーヒーにまつわる仕事です。 今年の秋には七十五歳。後期高齢者と呼ばれる年齢になります。 そんな私が、突然ひとりになりました。 妻に先立たれ、家の中の静けさが、時に胸の奥を冷た…

休業明けのコーヒー商売が教えてくれたこと

コーヒーと、私のこれからの日々 1月、2月は、電子書籍を作ったり、ブログを書いたり、家の中に籠って独りで出来ることだけを続けていました。 文章を書くことは嫌いではありません。 むしろ、コーヒーについて考えたり、言葉を選んだりする時間は、私にと…

病院の待合室から見える景色

総合病院の循環器内科の待合室に腰を下ろすと、視界の端にあの廊下が見える。 車いす専用のトイレへと続く、あの短いようで長い廊下。 去年の夏、週に三度、妻と一緒に通った透析室へ向かう道のりだ。 タクシーを降り、車いすを押しながらエレベーターに乗り…

エカワ珈琲店へGO!(2)

電子書籍『エカワ珈琲店へGO!(2)』を出版しました! 2026年3月15日(日曜日)、キンドルで新しい電子書籍『エカワ珈琲店へGO!(2)』をセルフ出版しました! キンドルの販売ページには「要約」だけを載せていますが、この『エカワ珈琲店のブログ』で…

「再開という名の、ゆっくりとした呼吸」

人は、ある日ふと立ち止まる。 それは自分の意思とは関係なく、心と身体が「もう少し静かに歩け」と告げてくる瞬間だ。 去年の十二月、私はその声に従うしかなかった。 精神の底に沈殿した重い影と、身体の不調が重なり、コーヒー豆を焼く気力がどうしても湧…

エカワ珈琲店が探す、“ちょうどいい”という名の居場所

コーヒーの値段には、不思議な境界線があります。 一杯の値段が少し変わるだけで、その飲み物が持つ「距離感」まで変わってしまうのです。 ほんの少し高くなるだけで、その一杯は日常からふわりと離れ、まるで特別な儀式のような距離をまといはじめるのです…

これからのエカワ珈琲店の歩き方

三月八日、日曜日の午前。 久しぶりに焙煎機に火を入れた。 前回、豆を焼いたのは一か月も前のことだ。 あのときは、自分の飲む分と、お供えに使う分、そしてご近所さんへのささやかな差し入れだけ。たった一回の焙煎で十分だった。 しかし昨日は違った。 営…

小さな一歩が、止まっていた時間を動かした日

新しいパソコンを開封した朝に 三月一日の日曜日に注文したパソコンが、四日の水曜日に届いた。 段ボール箱を開けたのは、翌日の木曜日。 新しい機械の匂いと、薄い保護フィルムの手触り。 そのどれもが、久しぶりに「未来」を感じさせてくれた。 初期設定に…

再開の一粒、静かな焙煎所にて

2月末の4日間、循環器のカテーテル治療のために入院していました。 たった 4日間とはいえ、74歳の身体にはなかなか堪える(こたえる)もので、退院した日に10メートル程度の距離を少し速足で歩いただけで息が上がる始末。 体力の衰えを、身をもって感じ…

静かな日々の中で思うこと

私たち夫婦は、長い間ふたりきりで暮らしてきました。 二人の間には子どもはおらず、親戚づきあいもほとんどない。 だからこそ、何かあったときに頼れるのは、いつもお互いだけでした。 病気になったときも、気持ちが沈んだときも、そばにいるのは妻だけ。 …

コーヒーの香りとともに、日常を取り戻すために

1週間前、妻の四十九日の法要を終え、永代供養のお墓に納骨を済ませました。 これで一区切り…のはずなのですが、心の中にはぽっかりと大きな穴が空いたままです。 脱力感という言葉では足りないほどの、深い静けさに包まれています。 妻の四十九日の法要の…

二人で焙煎していた日々を思い出しながら

久しぶりに焙煎機に火を入れました。ちょうど2か月ぶり、久しぶりの焙煎です。 手順を思い出しながらの作業は、どこかぎこちなく、ところどころ抜けてしまっていて、いつもなら20数分以上かけていた焙煎時間が、今回は20分ほどで終わってしまいました。 …

商売を再開する前に、立ち止まって考えたこと

仕方のないことなのですが、どうにも心が落ち着かない日が続いている。 「この不安定さから抜け出すには、商売を再開するのが一番だ」と思い、焙煎機の前に立つ自分の姿を何度も思い浮かべた。 コーヒー豆を焙煎し、通販サイトと店を開ければ、また日常が戻…

静かな悲しみと寂しさ、もう一度コーヒーを始める決意

妻を亡くしてからというもの、胸の奥にぽっかりと穴が空いたまま、時間だけが静かに流れていくようになった。 その穴は、ふとした瞬間に冷たい風が吹き抜けるようで、どれだけ日が経っても埋まる気配がない。 朝起きても、夜になっても、生活のどこかに彼女…

寂しくて寂しくてやりきれない

妻が旅立ってから、時間の流れがこれほど重く、ゆっくりと進むものだとは思わなかった。 時計の針は確かに動いているはずなのに、自分の中だけはどこか止まったままのようで、朝が来ても昨日の続きのまま心が動かない日が続いた。 最初の二週間ほどは、ただ…